やり直せない遺産分割協議

相続

やり直せない遺産分割協議

30年振りに通っていた小学校に行く機会がありました。

小学校5年生の終わりに引っ越してしまったのですが
とはいえ、5年間も通った小学校です・・・

道すがら見かける公園や信号すら懐かしく。

当然の話ですが人生はやり直しはできません。
いま、を大切にしようと改めて思いました。

やり直しがきくものもある

さて、今日の題材である“遺産分割協議”

相続の場面では
遺言があるケースや、相続人が単独であるケース等一部の例外を除き
通らなければ行けない問題、しかも最も難しい問題でもあります。

地価の高騰によりいまが売り時のあの土地は誰に・・・
生前全く親の世話をしなかったんだから貰う権利ないだろ・・・

などなど色々な思惑が交差するもの。
揉めに揉めると、争続、などとも揶揄されますが。

さて、この遺産分割協議。
当事者全員の合意があればやり直しはできるでしょうか?

正解は・・・

可能です。民法上は。

ブログのタイトルと違う・・・どうして?

とある兄弟のケース

お父様は既に他界、お母様が今回亡くなったご相続。

相続人は、とても仲の良いお兄さんと妹さん。

面談の場面では必ずお二人でお越しいただき
すごく真剣に、かつ真摯に当方の話も聞いてくれる方々。

ですが、1つ、問題がありました。

当方に相談に来られる前に
自宅の土地、建物の名義変更を行うよう知人に勧められ
まずは地域でも有名な司法書士の先生のところへ。

そこで、遺産分割協議書を作成し、相続登記を行い
それから、当方に相談に来られました。

「実家の土地建物は私が相続して
 ただ、妹には現預金をその分多めに相続してほしい」

というお兄さんの意向をまず、お伺いしました。

正式にお仕事を引き受け諸々書類を集めていたところ
重大な事実が判明しました。

それは・・・

不動産の名義変更を行った際の遺産分割協議書に

『一切の財産を 〇〇〇〇(兄)が相続する。』

と書いてあるのです。

であれば、相続人の意向に沿うように
遺産分割協議書を作り替えればいいのでは?

それも可能です。

ですが税務上大きな問題が発生してしまいます。

遺産分割のやり直しで多額の贈与税

前述の例の場合
では、遺産分割協議をやり直して妹さんにも20百万円相続させるとします。

結論としては
兄 → 妹 への20百万円の贈与として
多額の贈与税が発生してしまいます!!!

遺産分割のやり直し
これは、民法上は認められます。

ですが、税金の世界では次のように計算されます。

①当初成立した遺産分割協議書によって
 財産が相続人に帰属することとなる。

→すべての財産がいったん、お兄さんのものに)

②分割協議のやり直しを行って財産が移転した場合
 移転の方法によって譲渡所得税や贈与税が生じる。

→お兄さんから妹さんへ20百万円の財産が無償で移転
 つまり!お兄さんから妹さんへの贈与行われたこととなる

ということになります。

もちろん、贈与税や譲渡所得税を支払えばやり直しは可能です。
ですが、税務を理解していれば支払う必要がなかった税金です。

恐ろしい話ですね。

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ちなみにこのご兄妹ですが・・・
非常に仲の良い、ご兄妹でした。

妹さんが

「私はお金はいらないよ」

とお兄さんに伝えたのです。

ご両親、たくさん財産を残されていたため
実は何千万円というお金でしたが・・・

「こんなことで揉めたくないし
 今後も兄妹仲良く生きていきたい」

と。
(とはいえ、事後の方法は色々とアドバイスしましたが・・・)


相続の場面では色々な人間ドラマがありますが
このときほどグッとくることはありませんでした。


我が子にも
そんな兄弟愛を育んでほしいものです。

30年振りの母校・・・素敵なピンク色の建物でしたが・・・ 年月の経過を感じます。