正社員の手当削減は合法か。

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4年前の6月。雨でも元気。

正社員の手当削減は合法か。

関東が梅雨入りして、雨の降る日が続いています。子どもの送迎や洗濯物が乾かないのは憂鬱です。でも、しとしと静かに降る雨が好きだったりします。

とても興味深い判例がありましたので、今日はそちらをご紹介したいと思います。

正職員の手当削減「合法」 地裁判決、非正規と待遇格差解消で

正職員の手当を削って非正規職員と同一労働同一賃金化を図る手法は違法だとして、済生会山口総合病院(山口市)の正職員9人が手当減額分の支払いを求めていた訴訟で、山口地裁は5月24日、請求棄却の判決を出した。正規職員の待遇を引き下げることで正規・非正規間の格差を解消する手法を容認する初の司法判断とみられる。正社員の手当削減の動きが、他の企業にも広がる可能性もある。

2023年6月5日付け 日本経済新聞Web 記事より

この裁判で争われたのは、「就業規則の変更」です。正社員だけに支給していた手当(扶養手当、住宅手当)を全職員対象の手当(子ども手当と住宅補助手当)に改めたことに、「合理性」が認められるかが問題となりました。

労働基準法第10条では合理性があれば労働者に不利益な就業規則の変更が認められています。

労働者の不利益になるような就業規則の変更を、会社が一方的に行うことは原則として認められません(労働基準法第9条)。ただし、就業規則の変更により労働条件を不利益に変更する場合でも、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、①労働者の受ける不利益の程度、②労働条件の変更の必要性、③変更後の就業規則の内容の相当性、④労働組合等との交渉の状況⑤その他の就業規則の変更に係る事情に照らして「合理的なもの」であるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとすると定められています(労働基準法第10条)。

判決では、②労働条件の変更の必要性について、「パートタイム・有期雇用労働法」(正式:「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の趣旨に添うものであるとしました。その上で、経営が右肩下がりで人件費抑制を意識しながら手当の組み換えをを検討する必要があったと正社員の手当削減を肯定。職員全体の不利益は小さいと請求を退けました。

判決の内容を読むとなるほどな、とは思うのですが、とは言っても。「一労働同一賃金 」は非正規の待遇が改善されることを想定していたはずですが、日本郵政ショックのように限られた原資から再分配するとなると、このような結果になるのでしょうか。。。